第19話解説です。
ソニックは友として、黙ってナックルズに寄り添い続けます。
走り回らない。ジョークも言わない。何を尋ねるでもない。不満も言わない。
普段の天使・トリックスターなら考えられません。それでもソニックは友のために、ただ側にいる事を選ぶ。
やがてナックルズは、ソニックに向かって本音を吐露します。ソニックはその苦しみにそっと寄り添い、肩に手を置きます。
そして、観察者キュイからシャドウの危機を知らされます。キュイはここで再び観察者としての中立の立場ではなく、聖母を信じる賢者として、聖母へ知恵を捧げつつ、聖母へ断罪者の救済を求めます。
キュイの言葉を受けて、聖母は再起動します。そして戦士・守護者として、シャドウの救出へ向かう決意をします。ソニックは聖域に帰属する騎士として、聖母と並んでシャドウ救出へ向かいます。
シャドウはマグマのたぎる火山の奥深くへと、防護壁を自ら閉じながら突き進みます。
これは神話世界における典型的な冥界下りです。ここでのシャドウの戦いは、全て隠喩表現で、冥界下り・煉獄での試練・英雄再誕の前段階を表現しています。
仲間を逃しながら単独で冥界へ巡礼する騎士。防護壁を自ら閉じる。自身の退路を断ち、自己封印をしています。生還しない前提で、冥界へ向かってくだっている。
赤いマグマは生命・転生の象徴です。ここは行き止まりの地獄ではなく、煉獄。天国と地獄の境目。炎による浄化が行われる場所。生まれ変わるための試練の場を意味しています。
シャドウ自身は、死ぬつもりでここへ来ている。自己断罪の儀式の場です。
そして敵の姿にも意味があります。
・巨大電磁砲
・αレジーナ
・無人機の群れ
巨大電磁砲は、火山灰で聖母の守る聖域を、死の土地に変える、聖域を汚染する兵器。
シャドウは体当たりして兵器の攻撃をそらします。自身の身体を犠牲にして聖域を守る、殉教騎士。そして電磁波攻撃を受け、騎士の身体は徐々に壊れていきます。
究極生命体という戦闘兵器が、「敵を倒すまで絶対に止まらない」という自身の兵器性で壊れていく。究極の自己断罪です。
そして、αレジーナと無人機。
αレジーナは神話構造的に「歪んだ母性」です。蜘蛛のような姿の無人機。蜘蛛は神話的には女性の隠喩です。ナックルズが「聖母」「光」「受容」「正しい母性」を持っている事の対比。αレジーナは、「人格の欠如」「憎悪と執着だけを継承」「糸で絡めとる」「意志を無視して取り込む」「相手を支配する」存在。
ナックルズが「抱擁の母性」なら、αレジーナは「捕獲の母性」。
無人機は「歪んだ母」と共に巣に籠る「意志の欠如した子」。冥界の奥、つまりここは死の子宮。歪んだ母子が、共にシャドウを取り込もうとして、襲いかかります。
ここでのシャドウは、「聖母に帰還したい」「聖母に近づきたい」という欲・執着を持つ存在。
αレジーナはシャドウの心の鏡でもあります。シャドウの帰属の欲求が歪めば、αレジーナのような歪んだ支配者になる。シャドウはそれを理解し、恐れているからこそ、αレジーナに立ち向かおうとしています。
そしてαレジーナをシャドウは倒せません。腕が上がらない。騎士として限界を迎え、停止しかける。そしてその歪んだ母性を、聖母ナックルズが倒し、シャドウを抱きかかえるのです。
聖母と抱えられた子。聖母のために傷付いた英雄の、聖母の胸への帰還です。
しかし、シャドウはこの聖母の救済に絶望します。助けられたいのではなく、守りたかったから。騎士としての役目をこなせなかった自分自身への絶望です。
ソニックはここでは主戦場の外側で、残機の掃討をしています。聖母たちへ近づきません。天使として、二人が対話するための神話空間を守るための働きをしています。
そして煉獄での魂の浄化について。
シャドウはここであらゆる攻撃を受け、ほぼ動きを停止しかけます。敵は「歪んだ母性」。ここでシャドウは、古い自分を焼き払う事で、再誕の準備をしています。
「歪んだ執着」「支配欲」「欲望の暴走」
今まで抱えてきた騎士性を焼き払い、新たな騎士として生まれ変わる準備をしているのです。
古典神話では、冥界下りや事故断罪により、なんらかの罰(ペナルティ)がくだされたり、自己犠牲による死を迎えたりする事がありますが、Terraは現代神話です。シャドウに罰は下りません。シャドウも完全には死にません。
世界の中心であり、守護者のナックルズが「母性・受容の神」だからです。断罪しない。受け止める。そこにある全てを守り、包み込む。だからシャドウがどれだけ自分を断罪しようとも、最終的には抱えられ、受け止められ、守られてしまう。
そしてシャドウは自らの意志で聖母の元から去ってしまう。
隠喩表現的には「再誕の前段階」ですが、表面上の物語的には、これは「別れ」であり、「断絶」です。
「嬉しかったんだ!」
ナックルズは、怒りません。責めません。引き止めません。ただ自分の気持ちだけを素直に告げる。そしてシャドウはナックルズの前から消えてしまう。
第20話に続きます。