ある日の昼下がり、リビングのソファでナックルズがうたたねしていた。
シャドウはふっと笑って、目を細めた。
ナックルズがこの空間で、自分の側で無防備に身体を横たわらせ、リラックスしてくれているであろう事が喜ばしい。
ブランケットを持ってきて、ナックルズの腰にかけ、少し離れて再び眺めた。
しかし、そのうちシャドウの心に迷いが生じた。
隣りで一緒にまどろもうか。
寝ている隙に匂いをこっそり嗅ぐか。
それともここに立ってずっと眺めていようか。
この部屋にナックルズがいてくれるという奇跡を感じ、切に思う。
(時よ、止まれ)
その時、ナックルズが、うーん、と小さく呻いて足と足を擦り合わせて掻くような仕草をした。
シャドウはナックルズの足をみた。
大きな足を裸足で無防備に投げ出して寝ている。足の裏が見えて、シャドウは思わずそこに吸い寄せられる。
ナックルズの足の裏。
大地を踏みしめて歩く時の力強い様子。
(もっと感じとりたい)
シャドウは、すうっと近づき、足の裏にそっとキスをしてみた。
ナックルズは起きなかった。
そのまま足の裏の匂いを嗅いでみたが、ちょうどお風呂上がりのせいか、いつも通りのナックルズの匂いだった。
シャドウはぺろりと一回足の裏を舐めてみた。ナックルズがううん、と唸る。起きない。
シャドウはさらにぺろぺろと足の裏を舐め続けた。
(ナックルズの味だ。アイスキャンデーより甘い)
そう思いながら、ナックルズが歩く姿を想像した。
地面を踏みしめて歩くナックルズ。力強い歩み。大地に伝わるナックルズの鼓動。
(ナックルズ。いっそ地面よりも僕を踏んでくれ)
シャドウはナックルズの足の裏に自分の頬をぐいぐいと押し付け始めた。
「んん⋯⋯なんだ⋯⋯?」
足の裏の違和感に気付いて、ナックルズが起きた。
すると、血走った顔でひざまずいて、足の裏にぐいぐいと自分の頬を押し付けるシャドウがいた。
「うわあああ」
ナックルズは叫び、とっさに足を引っ込めようとした。
「起きたか、ナックルズ。ちょうどいい、僕を踏んでみてくれないか」
そしてナックルズの足を掴んだまま、床に這いつくばって、自分の頭の上にナックルズの足を押し付けようとした。
「うわああ、やめろ、なんなんだ!」
ナックルズは身体をすくませ、悲鳴をあげた。シャドウは構わず叫び返す。
「ちょっと踏むだけでいいんだ!」
ナックルズは腰を抜かし、涙目で叫んだ。
「昼寝してただけなのに!」
シャドウの肩がぴくりと動いた。
シャドウは顔を上げて、しまった、という顔をし、それから、やってしまった、という絶望したような顔になった。
シャドウは青い顔で立ち上がり、ナックルズの元から去ろうとした。
「待てよ」
ナックルズは、シャドウの腕を引っ張り、ソファに並んで座らせた。
「泣くことねぇだろ」
ナックルズがシャドウの肩に手をおいてなだめた。シャドウは鼻をすすりながらうつむいて言った。
「また君に迷惑をかけた」
ナックルズは足元に落ちたブランケットを拾い、二人の腰にかけた。
「寝ようぜ」
シャドウはナックルズの肩に頭をうずめ、すん、と鼻をならした。
そのまま二人は夕方までゆったりとうたた寝をした。