とある敵組織との熾烈な戦いが終わった翌日。シルバーはナックルズの隣りでウトウトしていた。
「おい、ベッドで寝ろよ」
ナックルズが寝落ちしそうなシルバーの肩を支えて言った。
シルバーはそのままナックルズの膝の上に倒れ込んで言った。
「ここで寝かせてくれよ。なんだか、あんたの隣りって落ち着くんだ。猫みたいに甘えてたシャドウの気持ちがわかるなぁ」
と言って、そのまま眠りこんでしまった。
そういうもんか、とナックルズは不思議に思いながらシルバーの頭をなでていたが、疲れていたので、うとうとしながら、だんだんと頭が沈んでいった。
そこへソニックがやって来た。
シルバーはナックルズの膝の上に丸まってすやすや眠り、ナックルズはシルバーの頭の上に顔を沈めてすやすや眠っている。
「なんだこいつら、和むなぁ」
ソニックは側に座ってまったりと二人を見守っていたが、ふいに真顔になって立ち上がった。
「あー、よし、シャドウ。お前はこっちで俺と語り合おう」
ナックルズの元へやって来たシャドウの前にソニックが立ちふさがり、視線を遮った。
こんな平和な空間にまた断頭台を手作りされてはたまらない。
シャドウは眉をひそめ、黙ってソニックのふくらはぎにローキックを連打した。ソニックは耐えた。
その時、ナックルズが起きた。目元をこすりながらめんどくさそうに言った。
「なんだよお前ら、喧嘩すんな」
「誤解だ。僕は何もしていない。ソニックが僕の進路を妨害してきただけだ」
シャドウがナックルズに訴えた。ソニックは黙って耐えた。
夕方になり、再びシルバーがナックルズの元へやってきた。
人見知りしない笑顔でナックルズに話しかける。
「なぁナックルズ、毛づくろいしてくれよ」
「なんで俺が…」
「いつもはブレイズにやってもらうんだ。こっちじゃ、あんたにやってもらいたいなって」
ナックルズは、力加減なんてわかんねぜぇぞ、といい、シルバーを膝の上に寝かせた。それからシルバーの毛並みをなでながら、ゆっくりと手入れをし始めた。
シルバーはうっとりとした顔で目をとじて、しっぽをゆらゆらさせて大人しく寝転がっていた。
ソニックがやって来た。
目を細めて仲良く身体をくっつけている二人を見守り、鼻歌を歌いながら振り返り───真顔でシャドウの前に立ちふさがった。
「ヘイ、シャドウ。俺が毛づくろいしてやるよ。リラックスしていこうぜ」
ソニックはナックルズ達を庇うようにシャドウの視線を遮り、シャドウの背中の毛をなでた。
シャドウは眉を吊り上げ、ソニックの肩の毛を思いっきり引っこ抜いた。
負けずにソニックはシャドウのもみあげの毛を抜く。シャドウはあごの下の毛を抜く。無言で毛の引っこ抜き合いになった。
ナックルズが気付いて、声を荒げた。
「喧嘩すんなお前ら、うっとうしいぞ!」
シャドウの顔がふにゃっと歪んだ。
「ソニック、どうせお前がなんか余計なちょっかいだしたんだろ」
ナックルズが付け足すと、迎合するようにシャドウが必死でコクコクとうなずいた。
ソニックは震えて耐えた。
日が暮れる頃、唐突にシルバーがニコニコしながらナックルズの胸の毛をつつき始めた。
「あんたって、胸の毛だけ白いんだな。毛並みが全身真っ赤だから、ここだけ目立つんだ」
胸の白い模様が気に入ったらしい。シルバーがニコニコしながらナックルズの胸の毛を撫でまわした。
「変か?自分じゃあんまり気にした事ないんだがな」
「いや、かっこいいよ。俺の毛は全身同じ色だから、なんか羨ましいな」
ナックルズは特に気にせず、胸の毛をシルバーに好きに撫でさせていた。
ソニックはあくびをして、二人を見やった後──
ナックルズの元へ突き進んできたシャドウの前にまた立ちふさがり、言った。
「シャドウ。胸の毛を触らせてくれ。俺は今、猛烈にそういう気分だ」
シャドウはまたソニックに視線を遮られ、イラついて首を傾けた。ソニックは真面目な顔をしたまま同じ角度で首を傾ける。ナックルズが全く見えない。
ソニックのすぐ後ろで、シルバーがニコニコしながらナックルズの胸を撫でている。ナックルズは不思議な顔でシルバーを見守っている。
シャドウは首を伸ばした。ソニックも首を伸ばす。
ソニックは真面目な顔でシャドウの胸毛をもしゃもしゃしてごまかした。
シャドウは無言でソニックに頭突きをし続けた。
やがてナックルズは、ソニックの頭がゴスンゴスンと突かれ、鈍い音を出し続けているのに気付いた。
「おい、また喧嘩か?ソニック。シャドウをあんまり怒らせるな」
シルバーがナックルズの胸から手を離し、ソニック達の方を見た。
ソニックは静かに涙を流し、振り向いた。
そのままソニックは、ナックルズの膝の上に黙って、しゃがみこみ、動かなくなった。
シャドウがイラッとしてソニックを引き剥がそうと前に出たが、シルバーがシャドウを遮った。
「ソニックだってたまにはナックルズに甘えたいんだろ。俺たちはあっちでコーヒーでも飲もうぜ」
そういって、シャドウを引っ張っていった。
ナックルズは呆れてソニックを見下ろした。
「なんだお前、シャドウじゃあるまいし」
「うるせえ、噛みつくぞ」
そのままソニックは丸くなり、すやすやと眠りについた。
世界観とか何も考えずに、「当たり前のように皇女様に毛づくろいしてもらうシルバー」を書いて、なんだこの世界観⋯⋯って思ったんですけど、そういう世界がどこかにあってもいいじゃないかと思ったので修正しませんでした。