第21話は、英雄としての再誕を果たしたシャドウが、赤子のような状態で停滞しているお話です。
第20話で、冥界下りと煉獄での試練を終えたシャドウは、聖母ナックルズの胸へ帰還し、英雄として再誕しました。
しかし、再誕した英雄は、すぐに元の姿へ戻るわけではありません。
冥界の断罪者としての、冥界の力を持ったまま聖母を守る騎士としての、役割の鎧を全てはがされ、生まれたばかりの赤子のような姿で再誕したので、シャドウは何もできません。
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ナックルズの側から離れず、指をしゃぶり、腕に噛みつき、眠り、食べ物を口へ運んでもらうだけです。
自分で戦うことも、誰かを守ることも、何かの役割を果たすこともせず、ただただ、聖母ナックルズの母性を受け取って生きているだけ。
第19話までのシャドウは、自分自身の存在を「聖母を守るためのもの」としてしか許すことができませんでした。
守れない自分には価値がない。
聖母を傷つける自分は消えるべき。
そうやって自分自身を断罪し、最後には自らを消そうとしました。
しかし再誕した直後のシャドウは何もできず、何の役にも立ちません。ただそこにいて、守られ、食べさせてもらい、眠っているだけです。
それでもナックルズは、シャドウを追い出しません。
「いつまでこの調子で世話し続ける気なんだよ」
ソニックにそう尋ねられても、
「知らねぇよ。シャドウ次第だろ」
と答えるだけ。
ナックルズは怒りません。文句も言いません。ただ受け止めて、世話をするだけ。
ソニックは最初、ルージュに依頼されて、責任感を抱いてシャドウを監視しますが、段々腹が立ってきます。
ソニックは聖域に帰属する天使で、同時に自分は聖母の親友だと思っている。聖域に後からやって来た冥界の断罪者が、赤子のようになって聖母の慈愛を一身に受け取っている。
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嫉妬で心を乱しているのです。
ただ、この嫉妬心は、「親友をとられた」「親友が俺以外のやつにばっかり関心を向けて、俺に構ってくれない」といった類の、子供っぽい嫉妬心であり、恋愛や性愛に結び付くものではありません。
それどころか、聖母の慈愛そのものに、天使ソニックは強い執着を持ちません。
ソニックは聖母ナックルズの慈愛を誰よりも理解していますが、ソニック自身は聖母の慈愛を欲しません。
聖域に帰属して、シャドウと共に聖母を守る騎士でもあるソニックですが、ソニックは聖母に従属する立場ではなく、あくまで独立した権能を持つれっきとした「神」です。
ソニックは「天使」ですが、キリスト教などに見られる「神の従者」ではありません。
「天使」という属性の、独立した権能を持つTerra独自の神です。
そして天使ソニックは既に聖域に帰属して、自分の居場所をはっきりと持っている。だからシャドウのように孤独でもないし、帰る場所を求めたりもしない。聖母の母性を理解して守護する事があっても、母性に飢える事も、求める事もありません。
ソニックはナックルズの母性が欲しいのではなく、「シャドウばっかり相手してずるい。俺はお前の親友だぞ、俺の相手もしてくれたっていいだろ」本当にこれだけなのです。
ナックルズは呆れますが、拒みません。ソニックの子供じみたわがままも、やっぱり受け止めます。
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少しさかのぼって、シャドウがナックルズの胸に噛みつくシーン。
ナックルズが小さな声を上げて、ソニックに「嫌な時は嫌っていえ」と叱られますが、ナックルズは狼狽えながらも、「嫌じゃない」と答えます。
ここのナックルズは、明確に羞恥心が芽生えています。
ただ、古代の浮島で孤独に育ったナックルズは、恋愛や性に関する抽象的な語彙を理解・認識しません。「恥ずかしい」「性的な何かを感じる」といった言葉を使えないし、認識もできません。
なので、今までになかった感覚に狼狽えながら、「嫌じゃない」「ちょっと痛かっただけ」と、自分が認識できる範囲の言葉しか放てません。
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そして真夜中。
シャドウは暗闇の中で目を覚まし、静かに呼吸だけを繰り返します。
「息をしていた」
冥界へ下り、自分自身を消そうとし、魂を失い、そして再誕した英雄が、自分が今ここで生きていることを静かに確かめています。
そして、左手の指の痺れを訴えます。
ナックルズはシャドウの手を包み、指先を撫でます。
ここは第一話の繰り返しです。
そして、指の痺れは気のせいだと言い、今度は自分がナックルズの手を包み、そっと下ろします。
そして翌朝。
ナックルズが起きる頃には、シャドウはいなくなっています。ソニックは慌てますが、ナックルズは動じません。
シャドウは英雄として再誕し、復活しますが、聖母に感謝を告げるでもなく、聖域に正式に帰属するでもなく、黙って聖母の元から去ってしまいます。
いつも通りなのか。何かが変わったのか。
シャドウは何を思って去り、ナックルズはそんなシャドウに何を感じたのか。
お互い、真意をはっきり告げぬまま、22話へと続きます。