第7話の解説です。
悪徳地下クラブに潜入し、消費される存在として羞恥に晒されるナックルズ。
ここは前回から続く構図がさらに強くなったもの。
エンタメであるゆるものを消費する人々は、聖母の肉体ですらエンタメとして消費しようとします。
それでもナックルズはめげずに潜入活動を続けます。
最終的に、地下一番深くにある部屋で、黒ローブの4人組に襲われるナックルズ。
ここでナックルズは黒ローブの4人組から、シャドウとそっくりな接触を図られますが、明確に拒絶します。

“シャドウじゃないといやだ”
恋愛の語彙をほとんど持たないナックルズですが、特別な相手として、明確にシャドウを選んでいる。でも、シャドウはそれを知りません。ナックルズ自身も、自分が誰をどういう意味で選んだのかはまったく理解していません。
そして、シャドウの名前を呼ぶ。
名を呼ぶとシャドウが来る。
神話的には契約の成立です。
その後、ルージュとキュイがシャドウとナックズに合流します。
シャドウはルージュに向かって怒りをぶつけ、ルージュが弁明します。
ルージュは有能ですが、Terraにおける彼女は人間であり、神ではありません。
ルージュは気丈に自分の正当性を主張します。シャドウはそれを否定はしません。
しかし、冥界の断罪者として、容赦なくルージュを断罪します。

「僕とナックルズを、同時に利用したな」
シャドウとナックルズ、どちらとも友人であると主張しながら、二人を同時に利用したことを断罪したのです。
ルージュは反論できません。
そして、シャドウはルージュを断罪しつつ、ナックルズをルージュに託します。
シャドウは怒っている。許すつもりもない。でも、信頼もしている。
だからルージュを断罪した上で、責任を背負わせたのです。
「君がナックルズをこの任務に引き入れた。ならば、責任を持って、島まで送り届けろ。介抱も含めて」
Terraのシャドウの恐ろしいところは、冥界の断罪者として、誰に対しても、どんな時でも、基本的に断罪の機能は衰えないというところです。
ナックルズの事で感情的になっていたにも関わらず、ルージュへの断罪の刃は容赦なく振り下ろされました。
人間のルージュはシャドウの断罪に抵抗できません。ルージュは責任を負って、一晩中ナックルズを介抱します。
ナックルズの無事をようやく確認して、ナックルズを抱きしめる。
罪悪感、言い訳したい気持ち、純粋な心配。
この抱擁に、人間くさい、いろんな感情が隠れています。

しかし、感情面で崩れかけたとしても、気丈なルージュは「社会・恋愛」の象徴として、シャドウとナックルズへの橋渡しを怠りません。
ナックルズはシャドウの事を誤解して、すれ違いが起きそうになります。
・シャドウに助けられた
・礼を言いたい
・でも、シャドウにとってはどうでもいい事なのかもしれない
ここでルージュは神話の言葉ではなく、人間の言葉でシャドウの気持ちを翻訳します。

「シャドウはね、多分――照れ臭いのよ」
冥界の断罪者が、大地母神に対して、信仰、欲望、望郷、恋慕、性欲、忠誠などの、あらゆる感情をないまぜにして苦悩していることを、「照れ臭い」の一言でざっくり表現します。
ナックルズは抽象的な概念を理解しません。でも、「照れ臭い」という言葉なら理解できる。そして、理解できるから、待つ事ができる。
そうして、ナックルズは、聖域の守護者として、聖母として、「待つ」という行動を改めて選ぶのです。
全40話中、悪徳地下クラブでトラブルが起きたこの第7話が、だんとつ妖しくてギラギラした雰囲気をしています。
夜の地下で、人間の欲望や消費行動に聖母が晒され、神話の聖性が人間の消費社会によって削られていくお話でした。
そして物語は、黒ローブの正体やユニに関する謎を引きずったまま、第8話へと続きます。