解説 第11話 

第11話の解説です。

聖母(ナックルズ)は、媚薬を盛られ、ほとんど動けません。

しかし、ナックルズは聖母にして戦士。戦士として戦う意志は捨てません。そして、必ず騎士(シャドウ)が迎えに来ると信じ、ハビシュから情報を引き出します。

ここでハビシュの姿があらわになります。

どこか病的で、子どものようにも見える、くすんだような灰色の毛並みのハリネズミ。

ハビシュはナックルズの聖性に触れ、信徒化しかけてしまい、自身の心の弱みをさらけ出してしまいます。

また、ハビシュはユニから離れ、独占欲を出してもいます。聖母をユニに渡したくない。自分だけが聖母に触れていたい。

独占欲ゆえに、ハビシュはユニから聖母を守ろうとします。しかし、完全に信徒化したわけではないので、すぐにあきらめてしまいます。

しかし、聖母がハビシュに語りかけます。戦士としての言葉です。

「自分で決めろ。お前の戦いなんだろ」

ハビシュは聖母の聖性に心を洗われ、戦いの終盤で、とうとう自ら戦いの終わりを選びます。


ハビシュとユニの神話的機能と正体について。

ハビシュとユニは神ではありません。法(ロゴス)に従い行動する異物です。

ハビシュは冥界の断罪者・シャドウの模倣体でした。人造の神として造られた失敗作。つまり、神のなりそこないです。

ハビシュの語源はHarvest(収穫)。でも、祝福されるべき結果(”収穫”そのもの)にはなれませんでした。

ユニはハビシュの遺伝子から生まれ、増殖した存在。そしてユニがハビシュの尊厳を破壊して、支配して、歪ませてしまった。

ユニは「増殖した悪意」です。強い自我はなく、法(ロゴス)によって動きます。悪意はあるのに、自我はないのです。

ユニを動かす法(ロゴス。システムのようなもの)は以下です。

・ハビシュの真似をする

・ハビシュの憎悪、悪意を増幅させようとする

・快楽を求め、ハビシュに快楽を強要する

・快楽を得るためにハビシュを支配、操作する

・破壊、破滅、侵食を快楽とみなす

ユニを生み出したのはハビシュを造った研究組織ですが、ユニのこの性質が凶悪過ぎて、研究組織はユニによって、また、ユニに支配されたハビシュによって、破滅に追いやられてしまったようです。


ハビシュとユニには神話的モデルがいます。戯曲「ファウスト」(ゲーテ作)に登場する、灰色の女たちです。

灰色の女たちは、「欠乏」「負い目」「辛苦」「憂い」という、四人の女。人間でも神でもなく、法(ロゴス)に従って動く存在です。主人公ファウストを破滅に導こうという執念はあるのに、自我や個性はほとんどありません。システムで動くだけのプログラムのような、幽霊のような、不気味な存在です。

灰色の女たちは法(ロゴス。プログラムの仕様のようなもの)に縛られて動くので、四人のうちの「憂い」一人しかファウストの屋敷に入れません。

ユニも同じです。法(ロゴス)に縛られて動くので、自由に行動はできない。そしてその法(”ユニはハビシュの真似ばかりする”)をナックルズに見抜かれ、シャドウ・ソニックに伝えられ、二人はその法の抜け穴を使ってユニを倒すのです。


ハビシュとユニの、物語上での役割について。

ハビシュとユニは、「ステージ2ボス」。

ハビシュとユニが何故ナックルズの前に敵として現れたのか。

それは彼らが「聖母ナックルズの聖性を証明するための試練」だからです。

ハビシュはユニによって尊厳を破壊され、主体性が奪われ、自我が壊れかけています。支配者のユニは法によって動くだけで、自我がほとんどありません。でも悪意はある。そして悪意を増幅させる。

失われた自我。主体性のないまま増幅する悪意。

そこから聖母ナックルズに問われている試練は以下。

「主体性なく戦う事は正か誤か?」

→戦士としての試練

「尊厳とは何か?」「尊厳を失う事は正か誤か?」

→守護者、聖母としての試練

ナックルズは戦う意志=主体性を持ったまま戦います。肉体が媚薬に侵され動けなくとも、言葉を駆使してハビシュに語り掛け、舌を使って情報をシャドウたちに渡し、勝利をもたらします。

尊厳も失われません。あきらめずに主体性=戦う意志を持ち続ける。結果、貞操は守られ、無事に味方の元へと帰還します。

そして、ハビシュは聖母の言葉によって最後に主体性を取り戻し、戦士として戦場に立った上で、主体性を持った悪としてシャドウの断罪の刃を自ら受け、倒れます。

ユニは最後まで法に縛られ、主体性なき悪として、断罪すらされず、自壊します。

そして、聖母ナックルズは試練に打ち勝ち、聖域へと帰還を果たすのです。


無事に帰還した聖母ナックルズと、聖母を取り戻した騎士にして冥界の断罪者のシャドウですが、二人の仲は元へ戻っていません。

シャドウは何も語りません。心を閉ざしてしまっています。

ナックルズはその様子を見て、自分が悪いと思ってしまう。

そこで天使にしてトリックスターのソニックが乱入し、二人の間に風を送り、重い空気を一変させます。

問題はまだ解決しない。でも天使がその場をつなぎ、二人の関係を優しく守ります。

そして12話へと続きます。