ナックルズはシャドウが帰ってくるのを待ち続けたが、三日経っても、シャドウは自室どころか、寮に姿を現さなかった。
四日目の朝、ナックルズは寮のエントランスにある受付の前に立ち尽くした。
受付でシャドウの不在について問い合わせれば、シャドウの行方はわかるかもしれない。
例えば、実家に帰省した。
病気で入院した。
用事で友人の家に滞在している、など。
ナックルズは、しばらく考えて、何も問い合わせずに受付を通り過ぎ、そのまま講義を受けるために大学へ向かった。
うつむいたまま、トボトボと大学本棟へ向かう小道を歩く。
(俺には、何も言いたくないって事だよな)
講義をふたつ受講し、少し休憩した後、本棟の中央ロビーの掲示板を見ていると、背後からシルバーがやって来た。
「よう、ナックルズ!次、経済学だろ。一緒に受講しようぜ」
「おう⋯⋯」
ナックルズは片手をあげて挨拶し、講義室に向かう階段に身体を向けた。
シルバーが眉をひそめて尋ねる。
「⋯⋯ナックルズ、疲れてるのか?⋯⋯それとも、また部活で何か⋯⋯」
「なんでもねぇよ」
ナックルズは吐き捨てるように言った。ナックルズは、思った以上に強い声が出た事に自分で驚き、思わず目をそらした。
シルバーは、少し息を呑んで、それから、何でもない風にナックルズの横に並び、階段を上っていった。
講義室に入り、並んで座った後、ナックルズはシルバーを横目に見て、低い声で尋ねた。
「俺がもし突然いなくなって、連絡もなかったら、シルバー。お前、どうする?」
「えっ」
シルバーは面食らって、ナックルズの顔をみつめた後、正面に向き直り、考え込んだ。
そして、うーん、とうなってから、真顔で答えた。
「⋯⋯めちゃくちゃ心配するとは思うけど。でもアンタの事だから、何か事情あるのかなって。しばらくは連絡があるまで、待ち続けるかもしれないな」
その時、講義室に教授が入って来て、講義が始まった。
二人とも正面を向いて、ノートを開き、教授の声に聞き入った。
ナックルズは、身体が少し軽くなるのを感じた。
(⋯⋯そうだよな。連絡がなくったって、ただ、待てばいいんだ。待っていれば、いつかシャドウは⋯⋯)
講義が終わり、ナックルズは、明るい声でシルバーに言った。
「シルバー。今日は確か、講義はもうなかったよな?この後焼肉でも行かねえか?」
シルバーが一瞬、ぱっと表情を明るくしたが、すぐに不安そうな顔に戻り、言った。
「ナックルズ、部活はいいのか?最近、やっと新しい監督が来たんだろ。新体制が始まったばかりで、忙しいんじゃないのか?」
ナックルズは気にせず、笑顔で言った。
「大丈夫だって。最近は夜練も毎日やってるからな。今日くらい気晴らししたって、問題ねぇよ」
シルバーがすぐに笑顔になって、飛び上がりながら、おおはしゃぎで言った。
「昼から焼肉なんて、最高だな!どこの焼き肉屋に行く?新しくできた焼き肉屋、寿司とラーメンもあるらしいぜ」
「そんなめちゃくちゃなメニューの店、味は大丈夫なのかよ」
ナックルズは笑いながらシルバーと一緒に、一気に階段を駆け下りた。
(待っていればシャドウは、きっと……)
本棟の中央ロビーに戻り、出口に向かおうとした時、右手の脇にある、一階の講堂の入り口が開いた。そこから、
───見慣れた、黒い毛並みのハリネズミが、人だかりに囲まれながら姿を見せた。
ナックルズが立ち止まる。
シルバーは、立ち止まるナックルズを見て、それからシャドウの方を見た。
人だかりの中の研究者らしき一人が、嬉しそうにシャドウに話しかけた。
「よかったよ、今日の発表。昨日の討論会での君の意見についても、また話を聞かせてもらいたいんだが」
シャドウは表情を変えず、淡々と答える。
「構わないが、ここ数日は討論会やら発表やらで、何かとせわしなかったからな。当面はのんびりデータ収集に回りたいところだ」
相手の研究者が満足そうにうなずく。
「では、そのうちに連絡しよう。この後は寮に帰るのかい?」
シャドウが冷たい声で答えた。
「いいや、今は⋯⋯自宅の、屋敷で過ごしている」
そう言って、シャドウは皆に背を向け、中央ロビーから出て行った。
動かなくなったナックルズに、背後からシルバーが話しかけた。
「⋯⋯ナックルズ。⋯⋯シャドウって、今、寮には⋯⋯」
「⋯⋯行こうぜ、焼肉。ラーメンと寿司もやってる店」
ナックルズは、振り向かず、明るい声で返しながら、出口に向かった。
それから二人は、大学構内中央の通りを、門に向かってまっすぐ歩いた。
ナックルズは楽しそうに言った。
「焼肉なんて久しぶりだな!ラーメンって何味のやつがあるんだろうな?とんこつラーメン食いてえな」
シルバーは、少し不安そうな顔をしたが、ナックルズの楽しげな声を聞いて、合わせるように笑顔で答えた。
「あ、ああ⋯⋯そうだな!俺、寿司が食べたいな。サーモンとエビと、納豆、あとソフトクリーム!」
「焼肉は食わねぇのかよ!」
「あはははは!」
二人で笑いあいながら、門へ向かった。
(シルバーがいてよかった。俺は今、楽しいんだ。楽しいから、大丈夫だ)
右手側に、寮へと向かう小道がある。ナックルズは脇目もふらず、まっすぐ門を目指した。
───その時、
「ナックルズ!」
名を呼ばれて、振り向いた。
青い毛並みのハリネズミが、視界いっぱいに入り込んできた。
「何やってんだ、こんなとこで。あっちのグラウンドで、お前んとこの部活メンバー、集合してたぞ。主将がお前を探してる」
ソニックがナックルズの腕を掴み、真面目な顔でナックルズを覗き込んだ。
ナックルズが目を見張り、固まった。
「ナ⋯⋯ナックルズ。部活は、さっき、行かなくても大丈夫って⋯⋯」
シルバーが途端に不安な顔に戻り、焦ったようにナックルズに言った。
「あ⋯⋯」
ナックルズの顔がみるみるうちに青ざめていく。目を泳がせて、肩をすくませた。
ソニックは言った。
「部活さぼって、遊びにでも行こうってか」
ナックルズの肩がびくんとはねた。
ソニックは、ゆっくりと歩み寄り、ナックルズの肩を抱いて言った。
「⋯⋯だったら、俺も誘えよ。つれないな。⋯⋯行こうぜ、親友」
ニヤリと笑って、ナックルズにウィンクをする。
シルバーが目を見張り、ソニックを見た。
ナックルズの瞳が揺れた。
「う⋯⋯⋯うっ⋯⋯」
ナックルズの肩がひくつく。
ソニックとシルバーは、黙ってナックルズを見つめた。
「ううう⋯⋯う⋯⋯うううう⋯⋯⋯」
ナックルズは、肩を震わせ、顔をくしゃくしゃにして、声を上げて泣いた。
「ううううう。う、うううううう、うっ、う、ソニック、うううう」
両手でごしごしと顔を擦りながら、言葉もなくして、ひたすら泣き続けた。
ソニックは、少し驚いた顔をしたが、何も言わずに、ナックルズの肩をぽんぽんと叩いた。
シルバーは、黙ってナックルズの顔を見つめていたが、しばらくして、優しい声で言った。
「俺が主将に連絡しに行ってくるよ。⋯⋯ナックルズ。ソニックがいるから、もう大丈夫だぜ。今日は無理せず、ゆっくりしてろよ」
シルバーは、ナックルズとソニックに手を振ると、そのままグラウンドの方へと駆けて行った。
ソニックは、人目のつかない小道に入り、花壇の脇の芝生にナックルズを座らせ、隣りにそっと腰かけた。
ナックルズはしばらく声を上げて泣きじゃくっていたが、やがて、肩を震わせながら、かすれる声を絞り出した。
「シャ、シャドウが、帰ってこない。自分の家で、暮らしてるって。お、俺が、怒らせちまった」
ソニックは落ち着いて尋ねた。
「何があったんだ」
ナックルズが、ぐ、と言葉を詰まらせる。
「言わなきゃ、わかんないぜ」
ソニックが真面目な顔で返す。
ナックルズは肩を震わせたまま、顔を真っ赤にして、目を左右に彷徨わせたあと、
「⋯⋯⋯じゃあ、なんでもねぇ」
小さな声でつぶやき、黙り込んだ。
二人の間に沈黙が落ちる。
ナックルズは、しばらくの間、うつむき、膝を抱え、両拳を口元の前で迷うように握り、こすり合わせていた。
少し経って、ようやく小さな声でつぶやいた。
「⋯⋯⋯⋯悪い、⋯⋯⋯忘れてくれ」
ソニックは、ナックルズをじっと見つめた後、言った。
「⋯⋯もしかして、シャドウにも同じ事を言ったのか?忘れてくれ、って」
ナックルズが、思わず目を見張り、ソニックの顔を見つめ返して言った。
「なんでわかるんだよ」
「ナックルズ⋯⋯」
ソニックが、ため息をつきながらナックルズの肩を抱き、さらに言った。
「シャドウはきっと怒ってないさ。……でも、きっと傷ついたぜ」
ナックルズが困ったような顔をした。ソニックは続ける。
「お前がシャドウに嫌な事をしたのか?それとも、シャドウがお前に何かしたのか?⋯⋯それを本当に、なかった事にしたいのか?」
ナックルズがとっさに返した。
「だって⋯⋯わかんねぇんだ、あいつが何を考えてるのか」
視線を彷徨わせながら、ナックルズは必死に言葉を探す。
強く握り合わせた両拳に指が食い込む。
「と⋯⋯とつぜん、近づいてきて⋯⋯か、勝手に、俺の中に入ってきたくせに、⋯⋯次の瞬間には、いなくなって⋯⋯」
ソニックは、ナックルズを見つめながら、静かに尋ねた。
「何を考えてるのかわからないから、嫌だったのか?」
「嫌じゃねえよ。でも、生きてて今までこんな事、一度もなかった。⋯⋯どうすればいいのか、わからねぇんだ」
ナックルズは思ったままの言葉をソニックにぶつけた。
ソニックの瞳に強い光が宿る。
「じゃあ忘れろなんて言っちゃだめだ。俺がお前の事をわかるまで側にいてくれって、シャドウに言えよ。シャドウはきっと待っててくれるさ」
ナックルズの瞳が揺れる。辛うじて言葉を絞り出した。
「でも、もう、シャドウは、俺の側には⋯⋯⋯⋯」
ソニックは、力強く微笑んだ。
「大丈夫だよ。言ったろ、ナックルズ。俺がいる」
日が沈む少し前。
シャドウは、亡き義父から受け継いだ大きな屋敷の中で、所有する資産の財務処理に追われていた。
義父の残した遺産や屋敷に執着はなかったが、ここにあるものを正しく管理するのは、残された自分の務めだとシャドウは思っていた。
シャドウは、PCに必要なデータを全て入力し終えると、窓の外を見た。
それから、正面の階段からエントランスに降り、玄関の扉を開けた。
日が落ちて、真っ暗になった前庭のど真ん中。
玄関からまっすぐ門へ続く道の正面から、青いハリネズミが歩いてやってくる。
「広すぎる屋敷だな。門から玄関まで、何メートルあるんだよ」
ソニックは、シャドウに向かって両手を広げ、嫌味っぽく首をかしげてみせた。
「不法侵入だ。インターホンも鳴らさずに、どこまでも図々しいやつ」
シャドウが冷え切った目でソニックを見下ろしながら言う。ソニックは構わず言い返した。
「不法侵入はお前の方だろ。ナックルズの中に勝手に入って、泣かせて、逃げる。⋯⋯逮捕か、罰金刑か⋯⋯あるいは、ここで裁判してみるか?」
シャドウは表情を変えず、低い声で答える。
「君に関係のない事だ」
ソニックはすかさず言い返す。
「ごまかそうったって、そうはいくか。お前が逃げるなら、俺が盗んでやろうか。⋯⋯お前の欲しかったもの」
シャドウが、静かな気配のまま、殺気を放った。空気が張り詰め、重く冷たくなっていく。
ソニックは構わずに啖呵を切った。
「俺がナックルズと暮らす。俺がナックルズの中に入る。お前の代わりに、全部俺がやってやるぜ。⋯⋯じゃあな、根暗の天才様」
シャドウとソニックが同時に動いた。
全速力で駆け出す。
シャドウはソニックに拳を突き出した。ソニックは避けながら走り続けた。
シャドウがスピンアタックでソニックを背後から襲撃する。ソニックは背中に衝撃を感じながら、身体を大きくひねり、シャドウの側頭部を蹴り飛ばした。
シャドウは後方に跳ね飛ばされつつ、すぐに受け身を取り、ソニックを追走した。
ソニックはシャドウに顔を向け、舌を出して挑発した。シャドウの走る速度が一気に上がる。
そのまま二人は、激しくぶつかり合いながら激走を続け、とうとう大学の門前まで到達した。
大学の門が見えてくると、シャドウは、ようやくソニックの意図に気付いて、立ち止まろうとした。
ソニックはシャドウの腕を掴んで、そのまま寮へ続く構内の小道へ向かった。
シャドウは、慌ててソニックの腕を振り払おうとした。ソニックは離れない。
「ナックルズは逃げずにお前を待ってるんだよ!だったら、お前も」
ソニックが叫んだ。
シャドウはたまらず叫び返した。
「離せ!これ以上、もう彼を傷つけたくないんだ」
ソニックが眉を吊り上げ、いっそう大きな声で叫んだ。
「俺に言い訳してどうすんだ、この弱虫!」
ソニックは腕に力を一層込めて、足の回転をさらに速め、寮の前まで一足飛びに突っ込んだ。
寮の門前の脇で、ナックルズがしゃがみ込んで待っていた。
ソニックは急ブレーキをかけ、シャドウをナックルズの前に突き出した。
シャドウは衝撃でつんのめり、ナックルズの上に倒れこんだ。
「くっ⋯⋯!」
「馬鹿、おま、ぐええっ」
ナックルズが下敷きになり、ヒキガエルのようなうめき声を出した。
「じゃあ二人とも、また明日な!」
ソニックは、構わずに笑顔で言ってそのまま門に向かって走り去っていった。
「ふ、ふざけんな、この馬鹿⋯⋯」
ナックルズは走り去るソニックの背中に向かって怒鳴ったが、上に被さるシャドウを見上げて、言葉を詰まらせた。
シャドウは、のそのそとナックルズの上から降り、そのままナックルズの隣りに丸まって、しゃがみ込み、顔を伏せて隠した。
ナックルズが言葉をなくして黙り込んでいると、シャドウは、かすれた声で、すまない、とだけつぶやいた。
二人はしばらく、隣り合って丸まって、しゃがみ込んでいた。
シャドウは顔を伏せたまま動かない。
ナックルズは隣りのシャドウを見て、正面に向き直り、短く息を吐いて言った。
「この間は、忘れろなんて言って悪かった。⋯⋯かっこ悪いところを見られちまったのが、どうしても嫌で⋯⋯こんなのは、俺じゃねえんだって」
それから、小さな声で、そっと付け足した。
「本当は、お前のお陰で助かってた」
沈黙が漂う。シャドウがかすかに震えた。
ナックルズは、静かに待った。
やがて、シャドウが声を震わせて言った。
「君に、今まであった事の全てを忘れられるのが怖くて、逃げてしまった。大それた望みなんて、持っているつもりはなかったのに⋯⋯」
ナックルズは、少し考え、尋ねた。
「もう、寮には戻らねえのかよ」
「い、いや、籍は消していないんだ。その、自宅の⋯⋯事務処理をこなすために、寮長に許可をとって、外出届を出して⋯⋯」
ナックルズは、それを聞いて、ニッと笑い、鼻をすすって言った。
「今日の晩飯、ハヤシライスだってよ」
シャドウは、思わず顔を上げてナックルズを見た。
目元をぬぐい、少し頬を緩めて言った。
「僕はビーフシチューの方が好きだ」
それから、立ち上がって、寮に入り、二人で向かい合ってハヤシライスを食べた。
消灯時間になり、ナックルズは自室のベッドの下の段に潜り込んだ。
ナックルズが、毛布の中から、不安げにシャドウを見つめる。
シャドウはベッドの上の段にのぼって、電気を消し、横になった。
真っ暗な部屋の中で、シャドウが小さくつぶやいた。
「同じ部屋に君がいる。本当はそれだけで、気絶しそうなほど幸福なんだ」
ゴソゴソと音がして、シャドウがベッドの縁を見ると。ナックルズの頭が下からひょっこりと出てきた。
ナックルズが二段ベッドの梯子をのぼり、シャドウの隣りに入り込もうとする。
「来るな」
シャドウは短く叫んだ。
ナックルズの動きが止まる。
「これ以上近づかれたら、僕はきっと止まれない」
シャドウは身体を固くして言った。
「俺だって、もう止まれねぇよ」
ナックルズがそう言って隣りに滑りこんできた。
すかさず、シャドウが肩に噛みついた。
「あ⋯⋯ぐっ」
ナックルズが呻く。
シャドウは腕を持ち上げ、右手の肩口から手首に沿って、順に噛みついた。
「ん、う⋯⋯あっ、⋯⋯ふ⋯⋯っ」
シャドウが馬乗りになり、鎖骨に沿って舌を這わせた後、首に噛みつき、そのまま吸い付いた。
「う、う、あ⋯⋯っ、あっ」
ナックルズが胸をそらせる。シャドウは背中をかき抱き、ナックルズの胸に噛みついた。
「ん⋯⋯ふっ⋯⋯」
その時、ナックルズは、シャドウが震えているのに気付き、シャドウの背中に腕を回した。
シャドウが短くうめく。
「ウウ⋯⋯」
ナックルズは、そのまま腕に力を込め、シャドウをしっかりと抱きしめた。
「ウッ⋯⋯ウ⋯⋯ウウウ⋯⋯、ウッ⋯⋯ウウウウ」
シャドウは、声をあげて泣いた。ナックルズはシャドウの背中を抱きしめ、優しくなで続けた。
それから二人は、抱き合って深い眠りについた。
数日後。
ソニック、シルバー、ナックルズの三人は、大学構内のカフェのテラス席でランチをしていた。
ソニックとシルバーがテンポよく雑談をしていたが、ふいにナックルズが口を開いた。
「あのな」
ソニックとシルバーが、同時にナックルズの方を向いた。
ナックルズはつい目を泳がせて、うつむいた。
ソニックが、テーブルを人差し指で優しく、トン、と叩いた。
「シャドウが⋯⋯」
ナックルズは思わず飲み込みかけていた言葉を吐き出した。
ソニックとシルバーは、静かにナックルズをみつめ、次の言葉を待った。
ナックルズは、顔を真っ赤にして、かろうじて、
「や、優しい、」
とだけ言った。
「そうなのか、よかったな!ナックルズが幸せそうで何よりだぜ」
シルバーがすかさず嬉しそうに反応した。
ナックルズは決まりが悪そうに鼻をかいていたが、シルバーの背後を見て、慌てて目をそらした。
シルバーの背後から、シャドウがやってきて、三人が座っている四人掛けのテーブルの、残りの席に勝手に座って言った。
「既に今このエリアは、降水確率が80%を超えている。さっさと屋内席に移動するか、ずぶ濡れでランチを楽しむか、好きな方を選ぶといい」
ソニックは笑いながら言った。
「やっぱおまえら、最高にちょうどいいぜ」