第28話「暁の襲来 2」

テイスルのラボに勢いよく飛び込んだシャドウとソニックは、驚いた顔のテイルスに、ナックルズとエンジェルアイランドの状況を手早く説明した。
テイルスは緊迫した顔で話を聞いた後、すぐに研究者の顔に戻り、言った。

「衝撃波を解析して気付いたけど、マスターエメラルドやカオスエメラルドの放つエネルギーと性質が似ているんだ。似ていると言っても、波動のアルゴリズムに共通性があるだけで全く異質⋯というか、異相のものだ。⋯⋯そう、『異相 』。つまり⋯⋯恐らく⋯⋯」

少し間をおいて、慎重に言葉を放つ。

「異なる世界のもの、って言えばいいのかな⋯⋯」

シャドウが目を見張った。ソニックが眉をしかめて尋ねる。

「ナックルズの身体から放たれた赤い光は、別世界のエメラルドの光って事か?」

「おそらく。でも、性質や能力は多分全然違うと思った方がいいと思う。似たような鉱物だからって、こっちのエメラルドと同じようなものだと思い込むのは危険だね」

テイルスは愛用の端末のディスプレイの中に示されたデータを見つめながら言った。

シャドウが表情を変えずに低い声で尋ねた。テイルスと冷静に問答を続ける。


「ナックルズを助け出すにはどうすればいい?」

「別の力で相殺するしかないんじゃないかな。ナックルズは今もエンジェルアイランドにいるの?」

「そうだ。最後に見た時には祭壇の上で倒れていた」

「マスターエメラルドは無事?」

シャドウはハッとした。

そういえば、赤い衝撃波が来た時、マスターエメラルドはその側で、びくともしていなかった。

「僕らの世界のマスターエメラルドと、赤い光の異世界のエメラルドは、もしかしたらお互いの力を相殺し合うのかもしれない。ナックルズの身体から異世界のエメラルドの赤い光が現れたのも、ナックルズが持つマスターエメラルドとの因果が関係しているのかも⋯⋯」

「カオスエメラルドを探そう」

ソニックが迷わず言った。

テイルスがうなずくよりも先に、シャドウがラボから飛び出した。ソニックも続いてすぐに飛び出した。


遡って数日前。

遊園地から帰って来た日、シャドウとソニックを追い出した後、ナックルズは小屋の中のベッドの上で、上体だけを起こして佇んでいた。

胸の上に手を当てる。何度も深呼吸をする。

「くそ⋯⋯⋯」

何かがおかしい。呼吸はできる。痛みもない。しかし、胸の中に何かがつかえている。

⋯⋯否。

胸の中で、かすかに何かの気配がする。

「⋯⋯誰だ。そこにいるのか」

声に出して問いかけてみる。返事はない。

(気のせいじゃねぇ。何かが、俺の中に⋯⋯)

立ち上がって小屋から飛び出した。空に向かって叫ぶ。

「どこのどいつだ!狙いはマスターエメラルドか?!俺に用なら、正面からかかってこい!」

反応しない。しかし、かすかな違和感は消えない。ため息をついて、戻ろうとした瞬間、

胸に抉るような激痛が走った。

「があっ!ああっ、ぐ⋯⋯あ⋯あ⋯⋯!」

その場に倒れ込んで胸を押さえこんだ。

しばらく悶え苦しんだ後、そっと胸元を見ると、そこには赤く光る、小さなエネルギー状の渦が生まれていた。

「なん⋯⋯なんだ、これ⋯⋯」

恐る恐る光の渦に触れようとした瞬間、ナックルズの脳内で何かが弾けた。

世界が真っ赤に染められて滅びていく様子が、頭の中に爆発的に広がる。

「なっ、なんだってんだ⋯⋯⋯!」

たまらずナックルズは叫んだ。

頭の中で誰かの声が静かに響く。

(女神に選ばれし者よ)

(滅亡が怖いか)

(恐れるなら従え)

(世界を創生せし器となれ)

ナックルズの視界の中で、世界が真っ赤に染まり、散り散りに焦げていった。

「やめろ、だれだ、何しやがる」

ナックルズは両手を振り回して頭をかきむしった。

(従わねば同じ道を辿る)

誰かの声が響く。

ナックルズは、エキドゥナ族の──自分の一族のたどった末路を思い出した。
欲望によって滅びた、自分たちの一族。

従わねば、世界も同じ道をたどる。⋯⋯エキドゥナ族のように。

「やめろ⋯⋯何が望みだ⋯⋯ 」

ナックルズは見えない誰かに向かって必死に問いかけた。

(汝、世界を救う器となれ)

見えない声が、ナックルズの問いかけに答える。

「器⋯⋯って、なんだ⋯⋯」

(従うならば救われる)

「ふざけるんじゃねぇ!」

ナックルズは叫び、胸元の光の渦を殴りつけた。

瞬間、渦の中から赤い光が強く放たれた。

「うがあああーっ!があああっ!あぐ、あああ!」

胸元を抉る激痛で悶絶し、その場でもがき苦しむ。うめき、もがき、その場で歯を食いしばって耐え続けた。

ナックルズはしばらく胸元を抑えて苦しんでいたが、痛みが収まり、ようやくゆっくりと上体を起こした。

しかし、ナックルズはある事に気付き、凍りついた。

胸の中から感じる気配が、さっきよりも近づいている。

(こっちへ、来てる)

ナックルズは絶望した。直感で理解した。

来る。得体の知れない何かが。

⋯⋯自分の身体の中に。

「や⋯やめろ⋯⋯」

ナックルズは肩を震わせ、胸元を抑えた。

ぞわり。⋯ぞわり⋯。

少しずつ、少しずつ。それが近づいてくる。

「来るな!」

胸を思い切り叩いた。痛みでゲホゲホとむせる。気配は消えない。抗えない。

胸の上の光の渦に、片手でそっと触れてみた。

呼ばれている。世界でたった一人、自分だけが。この赤い光に共鳴している。
ナックルズは身体で理解した。

この光は俺を求めている。俺の中に入り、俺の中から広がろうとしている。

俺が⋯⋯俺が悪いのか。

俺が消えれば、みんなは助かるのか。

「う⋯⋯うっ⋯⋯」

しばらくナックルズはその場で苦しんでいたが、やがて小屋の中にある道具箱から古びたフード付きのマントを取り出し、頭からかぶった。

身体も顔もマントで隠す。

(俺一人の身体の問題だ。誰も巻き込めねぇ)

ナックルズは自分を正しく消せる方法が分からなかった。

死にたいわけではない。

しかし、自分を消しでもしない限り、もうすぐ「それ」はここにやってくる。

再び、胸元の光の渦にに恐る恐る触れる。

何かの気配がまた少し濃くなる。ナックルズは肩を抱いて震えた。

「く⋯来るな⋯⋯みんなを巻き込むな⋯⋯!」

また激痛が走る。

「があああ!ぐうう、うっ、あ、あああ!」

(汝、器となれ)

「う⋯⋯うるせえ⋯⋯」

激痛は休まらない。

「ぐあああ⋯⋯!」

一晩中、その場で苦しみ続け、ナックルズはとうとう痛みで気絶した。

そして翌日、昼になる少し前。

小屋の前の草原の上で目を覚ましたナックルズは、けだるさで動けずに、マントのフードの隙間から自分の胸元を見た。

赤い光の渦。変わらずある何かの気配。

はだけたマントをたぐり寄せて胸元を隠した後、ナックルズは力なくその場に身を投げ出した。

しかし、別の気配を感じて、慌てて跳ね起きた。

「シャドウ⋯⋯!」

その場に構える。

シャドウが祭壇の方向から歩いてやって来た。

手には小さな赤い箱を持っていた。

祭壇にナックルズがいなかったので、小屋のあるこちらの方向へナックルズを探しに来たのだろう。

シャドウがナックルズの顔を見て、少し頬を緩め、口を開いた。

「ナックルズ。こっちにいたのか。⋯⋯調子はどうだろうか。昨日の事は⋯⋯」

「来るんじゃねぇ!」

シャドウがびくっと肩を跳ねさせ、立ち止まった。

ナックルズはそのまま勢いで続けた。

「消えろ。今すぐここから立ち去れ。島には入ってくるな」

シャドウの顔から、さっと血の気が引いた。それでもシャドウは遠慮がちに言葉を続けた。

「す⋯⋯すまない、でも、僕は⋯⋯⋯」

「謝るな。とっとと帰れ。島には近付くな」

シャドウは青白い顔で目を左右にうろつかせた。そして、不安げにナックルズを見て言った。

「⋯⋯そ、そのマントは一体。ナックルズ、何か君は⋯⋯」

「見るんじゃねぇ!来るな!消えろ!」

ナックルズは胸元を押さえて必死で叫んだ。

シャドウは言葉をなくして、うつむき、立ち尽くした。それでもすがるように言った。

「⋯⋯今日は、帰る。また、明日⋯⋯」

「来るな!二度と!この島には!」

シャドウの顔が悲痛にぐしゃりと歪むのが見えた。

ナックルズは心臓が潰れそうになった。それでも叫ぶしかなかった。

「二度と島には近付くんじゃねぇ。この島の事は忘れろ。俺は一人でこの島を守る!」

シャドウは肩を震わせ、足元を見ていた。

そして、手に持っていた箱を差し出し、そっと地面に置いた。

「すまなかった。僕は帰る。⋯⋯これは、差し入れだ。君が喜ぶと思って」

「そん⋯⋯⋯」

ナックルズは言葉を飲んだ。

いらねぇ、と言おうとしたが、つっかえてうまくしゃべれなかった。

シャドウは少し下がって、ナックルズをみつめ、言った。

「いつも君を傷つけてばかりですまなかった。⋯⋯身体には、気をつけてくれ。頑丈とはいえ、君は無茶ばかりする」

シャドウは背を向け、走り去って言った。

ナックルズは立ち尽くしていた。

胸に痛みが走る。

シャドウの置いて言った赤い箱を拾い、開けると、そこにはいつか二人で食べたクッキーと、赤い果実の焼き菓子が入っていた。

ナックルズはクッキーをひとつつまんでかじった。じんわりと優しい甘さが口の中に広がる。

「う⋯⋯うう⋯⋯」

そのまま泣きながらバクバクとクッキーを食べた。

「うううう、ふう、ううう、う」

赤い果実の焼き菓子にかじりついた。甘酸っぱくて美味しい。初めて食べる味だった。

(シャドウと一緒に食べたかった)

ナックルズは自分の気持ちにようやく気付いて、その場に崩れ落ち、声を上げて泣いた。

「うわあああああ⋯⋯ううう。ああああ」

光の渦はぐるぐると回りながら、ナックルズの胸元で静かに赤みを増していった。


時は戻って、シャドウとソニック。

夜明け前の薄暗がりの中。世界中を駆け巡り、カオスエメラルドを探し回っていた。

「シャドウ!そっちはどうだ?!こんな時に限って全然みつからねぇ!」

「みつかっていたらとっくに島に向かっている」

「お前なぁ!先にみつけたらちゃんと俺に連絡しろよ!」

情報端末越しに罵りあいながら、二人はエメラルドを探しまわった。ソニックはため息をついて、首を回した。

(ああ⋯⋯もう朝日⋯⋯)

視界の隅の光に入った反応して、思わずそう思ったが、もう一度見返した。

きらめく宝石の光。黄色のカオスエメラルド。

「みつけた!」

ソニックは両手でエメラルドに飛びついた。

むにゅ。

指先に変な感触が伝わって、顔を正面に向けた。仏頂面の黒いハリネズミが目の前でソニックをにらんでいた。

「あらら⋯⋯」

「その手を離せ。僕が先に見つけたんだ」

シャドウとソニックは、全く同じタイミングで同じエメラルドをみつけてしまったのだった。

「俺が先に掴んだんだぜ。そっちが離せよ」

「僕の指が先に触れたんだ。そっちこそ離せ」

お互いに譲らない。どうしても自分がエメラルドを使って、自分がナックルズを助けたい。

「離せ!」

「そっちこそ!」

「この根暗!」

「能天気男!」

テイルスがトルネード号に乗って、遅れてやってきた。

「喧嘩はやめなよ!ナックルズを待たせてるんでしょ」

テイルスは二人の手の上に自分の手を重ね、胸の前に掲げた。

「二人でこうやって持って歩いていけばいいよ。赤い光の中に入るだけなら、どっちかがスーパー化しなくても、エメラルドひとつ分だけでなんとかなるるんじゃないかな⋯⋯多分⋯⋯」

年下のテイルスに気遣われて、ソニックは赤面した。隣のシャドウを見ると、同じく眉をしかめて渋面をしていた。

決まりの悪さを仏頂面でごまかしている。

「時間が惜しい。行こうぜ」

「僕もあとからトルネード号で追いかけるよ。もう少し衝撃波について調べてみる。ナックルズをお願いね、二人とも」

二人はすぐに、シャドウのカオスコントロールで島へ向かった。

島に着くと、祭壇の方向に大きな赤い光のドームが見えた。慎重にエメラルドを二人で持って、赤い光のドームの中に入る。

ナックルズの声が聞こえた。痛みで絶叫する声。

「ナックルズ!」

叫び、二人でエメラルドを持ったまま駆け寄ろうとすると、ナックルズが叫んだ。

「来るな!」

直後に、赤い衝撃波が飛んできた。

手に持っているカオスエメラルドのお陰なのか、二人は衝撃に耐え、その場にとどまった。

祭壇を駆け上がり、ナックルズの元にたどり着く。

「く、来るなって、言っただろうが⋯⋯」

ナックルズが、倒れたまま、力なく言った。ソニックがナックルズの手を取り、泣きそうな顔で言った。

「ナックルズ。苦しいなら助けてって言ってくれよ。俺たち、いつだって一緒に戦ってこれただろ。なのに⋯⋯」

「ち、違う。俺の身体がおかしいんだ。俺が消えなきゃ⋯⋯ほ、他の全てが壊れちまう」

ナックルズがしゃべるのも辛そうに、震えながら言った。

「どういう意味だ⋯⋯⋯」

シャドウが低い声で尋ねた。

「もう駄目だ。く、来る。逃げろ」

ナックルズがソニックの手をふりほどこうともがいた。

その時、ナックルズの胸の赤い渦が一気に大きくなり、真上に向かって赤い光が長く伸びた。

光のドームの中が、今まで以上に真っ赤に染まる。シャドウとソニックはエメラルドを握りしめた。

柱のようにまっすぐ伸びる赤い光の中から、赤い人影がふわりと飛び出し、ゆっくりと祭壇に降り立った。

「ふん⋯⋯⋯やっとつながったか」

赤い人影は、腰に手を当て、周囲を見渡した。そして、ナックルズをみつけ、笑いながら言った。

「そこの赤い毛並み。お前が『適合者』だな」

「へっ、悪役登場ってか。タイミングがよくて助かるぜ。ついでに名前も名乗ってもらいたいね」

へらず口を言いながら構えるソニック。

現れたのは、目つきの鋭い深紅のハリネズミ。

胸元に真っ赤に光る水晶が埋め込まれている。ソニックをにらみつけ、口の端を笑わせて言った。

「威勢のいい部外者だな。いいぜ、恥知らずの愚者にも我らが女神の御慈悲をくれてやる」

深紅のハリネズミは胸を張って三人を見下ろし、改めて続ける。

「俺は”暁の船団”師団長、ジーク。女神イオシスの導きの元に、我らがプリズムの”器”たりえる適合者を迎えに来た」

そして、余裕たっぷりの笑みでナックルズを見返して言う。

「汝、世界を救う器となれ」

ナックルズの顔色が変わった。

「⋯⋯てめぇか⋯⋯俺の中でうるさくしてたのは」

「フン。なんだ、ちゃんと聞こえてたのか。その割に時間がかかったな⋯⋯まさか、抵抗しようってんじゃないだろうな」

ジークがナックルズに向かって歩み寄る。

シャドウとソニックが動こうとした瞬間、ジークの胸元が光り、シャドウとソニックは同時にふっ飛ばされ、地面に激しく叩きつけられた。

「くっ⋯⋯」

「しまった⋯⋯!」

手に持っていたエメラルドが転がって飛んでいった。途端に、二人の身体に上から強い圧がかかる。

「うぐっ」

「くそっ⋯⋯」

二人は指一本動かせずに、地べたにはいつくばった。

それを見たジークが鼻で笑い、辺りをゆったりと見渡した。祭壇の中央に鎮座するマスターエメラルドを眺め、目を細める。

「へぇ⋯⋯こっちの世界にも、クリムゾンプリズムがあるんだな。色も全然違う。”器”がこの世界で見つかったのも、異相のプリズムから来る因果によるものか」

その時、ナックルズがジークに向かって飛びかかった。

「ごちゃごちゃとうるせえんだよ!」

ジークの顔面に右拳を叩きこんだ。ジークは片手で防ごうとして防ぎきれず、後ろに思い切りのけぞった。

勢いのまま身体を回転させ、ナックルズの脇腹に蹴りを入れる。ナックルズは動じずにジークの足を掴んだ。

ジークは眉をしかめ、素早く両手を自分の胸の赤い水晶にかざした。

瞬間、ナックルズの胸元の赤い渦が大きく光り、ナックルズの身体が激しくのけぞり、後ろにはじけ飛んだ。

「がああっ!あぐっ!あ、ぐあっ!ああっ!」

地面に倒れこんだ ナックルズの身体がびくびくと痙攣した。

「ナックルズ⋯⋯!」

シャドウはナックルズの名を呼んだ。しかし、上からのしかかる強い圧で、地面に張り付いたまま何もできない。

チッと舌打ちをして、吐き捨てるようにジークが言った。

「お前、散々女神の御威光をその身に受けておいて、まだわかってないのか。抵抗するな。滅亡を恐れるのならば、な」

ジークはナックルズの前にひざまずき、抑揚のない声で告げる。

「女神に選ばれし者よ」

「滅亡が怖いか」

「恐れるなら従え」

ナックルズの身体が激しく震える。

「やめろ⋯⋯俺は⋯⋯」

ジークが耳元に口を近づけ、囁いた。

「世界を創生せし器となれ」

「がああああ!」

ナックルズの胸元から強い光が噴き出した。ナックルズが激痛にのたうち回る。
ジークはナックルズの頭を掴み、乱暴に持ち上げた。

「俺の言葉じゃない。女神の御意思だ。ただ従え。そうすればお前の世界は壊れずに済む」

その時、シャドウがジークに飛びかかった。

ジークがすんでで身体をねじって避け、片手を自分の胸元に添える。

「ぐっ!」

ジークの身体から放たれた赤い光がシャドウの身体を貫いた。シャドウがうめいてその場に倒れこむ。

「シャドウ!」

ソニックが遅れて構えたが、飛び出す前に赤い光に貫かれ、前のめりに倒れた。

「やめろ⋯⋯!二人に、手を、出すな⋯⋯!」

ナックルズが必死にジークにすがりついた。無機質な声でジークが答えた。

「だったら歩け。行くぞ、女神の御元へ」

ジークが両手を大きく掲げると、島を包んでいた大きな赤い光が一気に収束した。

とたんに、外界からの冷えた風と共に、広大な空と、夜明けを告げる鮮やかな暁光が島を強く照らした。

「ハハハハ⋯⋯見ろ、救世の夜明けだ。創生の暁だ」

ジークがそのまま両手を高く掲げる。

消えかけていた赤い光がジークとナックルズを包み、大きな渦となって、二人を飲み込んだ。

朝日が照らす美しきエンジェルアイランド。

後には、弱々しく漂う赤いもやと、倒れて動けなくなった二匹のハリネズミだけが残されていた。